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スポーツにおける肩のケガ『インピンジメント』

スポーツにおける肩のケガ『インピンジメント』

こんにちは!ウェルネス鍼灸整骨院 院長の草野です。

緊急事態宣言も明けてスポーツの秋ということで

今回はスポーツで起こりやすい肩のケガについて解説していきます。

肩関節の構造とケガをしやすいスポーツの動作

肩は球状関節である肩甲上腕関節と、その上方に存在する小さな肩鎖関節という

主に2つの関節で構成されています。

スポーツ選手において肩のケガは、直接的外傷とオーバーユース(使いすぎ)

の両方から起こります。投動作を含む競技、また競泳やバレーボールといった繰り返し

オーバーヘッド動作(腕を頭上に振り上げる動作)を行う競技の選手は、特に関節を通して

得られる繰り返しの強い力によって、肩のケガを負いやすいといえます。

治療法

多くの肩の損傷に対しては保存的治療が施されます。

すべての肩の損傷に対する治療に関して大切なことは、

相対的な休息をとり不快な動きを避けること、冷却と必要に応じた抗炎症薬による

痛みと炎症の軽減、痛みのない状態での完全な可動域の回復、そして肩の強化

特に肩の動的安定性に最も重要とされる腱板筋群の強化です。

肩の損傷を負った選手が、後に下記の徴候や症状がある場合には病院の受診をお勧めすることがあります。

・かなり強い、もしくは持続的な痛みや変形。

・持続的なしびれ感やチクチク感。

・肩の顕著な筋力低下や筋肉の萎縮。

・腕や肩を動かすことができない。

・安静にしていても痛みが変わらない、もしくは悪化がみられる。

肩インピンジメント

一般的な原因

 肩インピンジメントは、水泳やサーフィン、野球、ソフトボール、水球、バレーボールなど

オーバーヘッド動作や投球動作を繰り返し行う競技においてよくみられます。

正常な肩の運動では、腱板と肩峰下滑液包が肩峰の肩峰下腔内を滑らかに動きます。

さらに、滑液で満たされている小さな肩峰下滑液包は、腱板が肩峰と肩鎖関節下方を

滑らかに動くのを助けます。

しかし肩インピンジメントでは、オーバーヘッド動作のなかで、腱板と滑液包が

肩峰の直下で挟まれたり衝突し、痛みを生じます。

いくつもの要因が肩インピンジメントを引き起こす可能性があります。

 第一の要因は肩の構造の問題によりに症状が出やすくなっている。

例えば、生まれつき彎曲したり鉤型の肩峰で、肩峰下腔が狭くなっている人がいます。

加齢による肩鎖関節関節症や肩峰下方の骨棘も肩峰下腔を狭める原因となります。

腱板と滑液包が自由に動くための空間が小さければ小さいほど、

これらの構造は肩の動作に伴い挟まれやすくなります。

 第二の要因は炎症です。肩峰下腔における腱板のオーバーユース(使いすぎ)

または繰り返し同じ動作を行う刺激は、腱板と肩峰下滑液包の炎症と腫脹を引き起こします

(腱板腱炎、肩峰下滑液包炎)。刺激を受けた腱や滑液包が痛むだけでなく、

炎症や腫脹のみられるこれらの構造がオーバーヘッド動作によって

肩峰下腔で挟まれたり衝突した時に痛みは増強します。

 第三の要因は、とくに若年選手において問題となる肩関節不安定症(ルーズショルダー)です。

オーバーヘッド動作中に、肩関節の構造が上腕骨頭を関節窩に安定させる効果を

もたなければ、上腕骨頭は関節窩から逸脱しインピンジメントが発生します。

根底にある肩の不安定性が、若年選手における肩インピンジメント症候群の原因となることが多いです。

確認・診断

 肩インピンジメントは、すべての年齢層の選手によくみられる疾患です。

典型的なのは、肩の前方や側方に徐々に生じる痛みが、腕を伸ばしたりオーバーヘッド動作で

増強します。痛みが上腕部にまで及ぶこともあります。

インピンジメントが生じると、肩の可動域の減少と顕著な腱板の弱化によって

頭の上や後ろに腕を持ち上げる動作が困難になります。

夜間に痛みが出現したり、痛みのある方を下にして寝ようとすると

肩が痛くて眠れないという症状もこのケガの特徴の1つです。

 インピンジメントが繰り返されると、腱板腱炎(腱板腱の炎症)や

肩峰下滑液包炎(腱板の上にある肩峰下滑液包の炎症)を引き起こします。

これら2つの病態はインピンジメント症状を悪化させうるものです。

対応・治療

 自宅も肩インピンジメントの処置を開始することは可能です。

痛みと炎症が治まるまで、繰り返しのオーバーヘッド動作や症状を

悪化させうる他の運動を避ける。

イブプロフェンなどの抗炎症剤とアイシングは、痛みと炎症を抑えるために有効です。

初めは、正常な痛みのない動作を回復するための肩関節可動域訓練を始め、

痛みが軽減すれば段階的にエクササイズを取り入れていきます。

 これらの処置を行っても症状が継続する場合には、炎症と痛みを抑えるために

電気療法や超音波治療などの物理療法を用いた一般的な理学療法が必要となってきます。

肩峰下滑液包への注射は、瞬時に痛みや炎症を軽減させるためには効果的な治療方法です。

また、腱板筋群に特に重点を置いた肩の機能訓練プログラムを段階的に進めていきます。

これは、特に肩の不安定性に起因する肩インピンジメントに罹患している若年選手に重要です。

 機能が改善しない選手は、インピンジメントによって生じた構造的あるいは

解剖学的異常を矯正するための手術が必要になることもあります。中高年選手では、

関節症を生じた骨棘(関節にできた骨のトゲ)を削り肩峰下腔の徐圧を行い、

腱板が自由に動ける空間を広げます。若年選手に対しては、肩の不安定性に起因した

肩インピンジメントの発生を防ぐために肩を安定させる手術が必要となることもあります。

肩インピンジメントがしばらく継続するようであれば、繰り返しの炎症や

刺激によって腱板が徐々に変性し、その結果として断裂に至る場合もあります。

競技復帰

 多くの選手は保存療法で改善し、肩関節可動域が痛みなく回復し肩周囲の筋力が

回復すれば徐々に競技復帰となります。復帰までの期間は数週間から数カ月まで、

症状や損傷の程度、そして競技特性によって異なります。

一般的には競技復帰の際にテーピングや装具は必要ありません。

症状が再び出現した場合は、競技参加を中止するか痛みの出る動きを止め、競技

または運動のなかでそれらの症状がまったく現れなくなるまで調整すべきです。

 症状の再発を防ぐために、競技中の特定の動きを制限するか避ける必要があることもあります。

競技技術を修正することで再発を防ぐことが可能です。

例えば、投手がオーバーヘッドからの投球の代わりにサイドスローに修正することで、

肩峰下腔で起こりうる腱板と滑液包のインピンジメントを防ぐことに繋がります。