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スポーツにおける肩のケガ

スポーツにおける肩のケガ

こんにちは。ウェルネス鍼灸整骨院 院長の草野です。

前回のブログでは肩のインピンジメントについて解説しました。

今回も肩のケガにフォーカスを当てて解説していきたいと思います。

肩の構造と動きについてはこちらで解説していますので

今回は構造については省略させていただきます。

今回解説させていただくケガは肩関節脱臼です。

コンタクトスポーツだけでなく野球などの投球動作のあるスポーツなど

様々なスポーツに起こりうるケガです。

私もスポーツ現場に出ている際にこの肩関節脱臼の場面に

多く関わってきたので今回、紹介させていただきます。

Contents

一般的な原因

 多くの肩関節脱臼は、胸をいっぱいに伸ばした状態、もしくは

オーバーヘッド動作において、肩の正面に強い衝撃を受けることで引き起こされます。

そのような衝撃はグラウンドで転倒した場合、物や他の競技者との衝突、

またタックルをした際に発生します。

肩関節脱臼がよくみられるスポーツは

アメリカンフットボール、ラグビー、レスリング、スキーなどです。

 選手の腕が固定され体幹のみが前方へ動き続けた場合、

非常に大きな力が肩関節に生じます。この力によって、ボールのような

上腕骨頭がソケットである肩甲骨の関節窩からすべり外れ

肩関節の脱臼が生じます。水泳、バレーボール、野球といった、

繰り返しのオーバーヘッド動作や投動作を行う競技において長い競技歴を

持つ選手は、肩関節脱臼を生じやすいといえるでしょう。

肩関節の関節包や靭帯の伸張を何度も繰り返すことにより、

肩関節は緩く不安定になります。

確認・診断

 肩関節の脱臼によって、一般に選手は、瞬時の痛みと肩関節あるいは

腕の動作が困難であることを訴えます。同時に、肩が外れたという表現を

することもあります。変形は明らかな徴候で、肩甲骨上部の肩峰が突出し、

その下の皮膚の凹みから肩関節脱臼が示唆されます。

 肩関節脱臼によって、関節包と肩を保持している肩甲上腕靭帯は断裂

もしくは伸張されます。また、関節包と靭帯が付着する関節唇は関節窩から

剥離している可能性があります。場合によっては、腱板や神経など肩関節周辺の

他の組織が損傷することがあります。

とくに高齢の選手においては、肩関節脱臼の際に骨折を伴うことがあります。

とくに大結節骨折が肩関節前方脱臼に合併する報告は多いです。

肩関節脱臼のほとんどは上腕骨頭が前方に向かってすべり外れて起こる

前方脱臼で、上腕骨頭が関節窩から後方に向かってすべり外れた後方脱臼の

頻度は少ないといわれています。

対応・治療

 急性期の肩関節脱臼の処置は上腕骨頭を関節窩に戻す柔道整復術です。

肩関節の整復は、しばしば現場で経験のある医師もしくは柔道整復師によって

施されます。現場で整復できない場合には、病院へ移動するまで腕と肩を

固定する必要があります。病院では単純X線撮影にて骨折の有無を確認し、

整復後に肩関節が整復位にあるかを確認します。健側の手関節周囲で脈拍が

感じられるにもかかわらず、脱臼側では確認できない場合には、地域の

総合病院に連れて行かなければなりません。

 初回脱臼の場合、肩関節脱臼が整復されたならば、治癒を期待して

腕と肩を吊り具かサポーターで3〜4週間固定します。40歳以上の選手では

肩のこわばりや関節包の癒着を防ぐために、1〜2週ほどの短い固定期間とします。

近年の研究では、前方脱臼の整復後には装具による外旋位での固定が

肩関節の形態の治癒に適し、再脱臼が減少するであろうと報告されています。

大結節骨折が合併した場合は、一般的に4週程度の吊り包帯での固定による

保存的治療が施されます。しかし、解剖学的に5㎜以上の転位が大結節に

生じている場合には、一般的に手術が勧められます。

 適切な固定期間の後に、選手は競技復帰に向け肩関節可動域と肩周囲の

筋力回復のための理学療法を行います。腱板筋群(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)

の強化は、すべての肩障害、とくに肩関節の不安定性を回復させるために

非常に重要です。これらの筋は肩関節の動的安定化機構であり、上腕骨頭を

関節窩に保持し反復性脱臼を防ぐために役立ちます。脊柱に沿った脊柱筋群は

肩関節機能に重要な役割を担っており、その筋力を増強するために

体幹回旋運動、腹筋運動、背筋運動など様々なエクササイズが推奨されます。

競技復帰

 肩関節が痛みなく完全に動き、肩周囲筋力が完全に回復するまで、

患側の腕の運動は制限しなければなりません。競技によっては、

受傷後8〜12週で競技に復帰することがあります。競技復帰の際に

前方脱臼から肩を保護するサポーターを装着することがありますが、

残念ながらこれらの装具は肩関節の動きを制限するもので、選手の

パフォーマンスにある程度影響が出てしまいます。

なので、サポーターやテーピングで保護しつつも選手自身の筋力を

鍛えることによる予防が重要となります。

合併症

肩関節脱臼の受傷と同時に起こりうるケガです。

前述した大結節骨折の他にもこれらの種類があります。

・バンカート損傷

肩甲骨にある関節唇の前下方部分の裂離損傷です。

脱臼でこの前方関節唇が剥がれた状態をバンカート損傷といい

なかには関節唇と同時に関節窩も傷ついてしまうケースがあります。

関節唇損傷や剥離による痛みが継続し不安定性を訴える選手では、

保存療法ではなく手術が施されます。

・ヒルサックス損傷

脱臼した際に関節窩に上腕骨頭がぶつかることにより上腕骨頭の

後外側が陥没骨折を起こします。

・大結節裂離骨折

・回旋筋腱板損傷

・腋窩神経麻痺

・血管損傷