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コンタクトスポーツにおける首のケガ

コンタクトスポーツにおける首のケガ

こんにちは。ウェルネス鍼灸整骨院 院長の草野です。

今回は、自身がトレーナー活動として帯同しているアメリカンフットボール

(コンタクトスポーツ)に多く発生する首のケガについてお話ししたいと思います。

Contents

はじめに

 首や頚椎の損傷はどのような競技レベルの選手にも起こります。

首・頚椎損傷は、軟部組織損傷や脊椎骨折のように急性損傷としても発生しますし、

加齢による脊椎変形過程で慢性的にも発生します。

これらは、軽傷で一時的な機能障害から、生命が危険にさらされる重篤な障害まで、

さまざまな程度の障害を引き起こします。

 コンタクトスポーツを行う選手における首・頚椎の損傷を予防するために

重要なことは、正しいヒッティングやタックルの方法を教育することです。

相手のプレイヤーと常にアイコンタクトをとりながら、コンタクトする際に

相手の頭を押し下げたり、肩を落としたりすることを避ける。

正しいコンタクトを行うことによって、頭や首が反りすぎてしまう過伸展位

となることを予防し、頚椎損傷の発生を予防することができます。

ショルダーパッドやネックロールのような保護具は、衝撃のときのショックを

吸収して、首の過伸展や過度の側屈(首が横に倒れること)を防止してくれます。

首を保護するためのパッドは首に適合して付け心地がよく、かつベース部分は

適度に固く作られているものを選ぶことをお勧めします。

また、緊急時に備えて、バックボード(担架)、硬性の頚椎カラーや

蘇生用の機材などを現場に備えておくことも重要となります。

アメリカンフットボールのようなヘルメットをかぶる競技においては、

フェイスマスクを外すためのフィリップドライバーも常備しておきましょう。

 今回は、首・頚椎損傷について解説し、それぞれのケースについて

緊急に行うべき処置と、長期にわたって必要となる対応について

説明します。

頚椎捻挫

一般的な原因

 アメリカンフットボールやラグビーでタックルをした際に

首から倒れることなどで発生します。競技スポーツ以外で

最も一般的な原因は、自転車事故における後面衝突です。

確認・診断

 頚椎捻挫、いわゆるむちうち損傷は、首の軟部組織のみの損傷であり、

コンタクトの衝撃によって首が急に曲げ伸ばしあるいは回旋を

強いられることによって発生します。痛みは後頭部から肩(三角筋と僧帽筋)

にかけての広い範囲に生じます。首のさまざまな可動範囲において

首の痛みがあったり、首の筋肉の硬直、肩こりが出ますが、

可動域制限が出ることは少なく、上半身の異常知覚、しびれや脱力感、

上半身への放散痛を伴うことは多くありません。

対応・治療

 治療方法は、受傷した選手の症状やその損傷の程度に応じて選択します。

多くの頚椎捻挫は、数日の経過観察によって自然に治っていくものですが、

必要に応じて痛み止めや抗炎症剤を、頚椎の可動域制限が消失するまで

服用していただきます。首の筋緊張を緩和することを目的とした、マッサージ、

ホットパック、電気刺激、超音波治療などの理学的治療は、痛みなく

可動域を回復させ首の筋力強化を行うのに有効です。首の骨を圧した際の痛みが

ある場合や、痛みが持続する場合、著明な頚椎可動域制限がある場合、

あるいは上半身に放散する痛み、しびれ、異常知覚があるような場合には

X線、CTスキャンまたはMRIの撮影による評価を行います。

競技復帰

 痛みや首の不快感が無くなった後は競技復帰が可能となります。

運動中にネックロール、カウボーイカラーなどの軟性頚椎用カラーを

装着することによって、首の伸展・側屈をを制限することができ、

頚椎捻挫の再発を予防することができます。これらの装具は主に

アメリカンフットボールの現場で用いられています。また、適切な

タックルの方法を指導することも頚椎捻挫予防に有効です。

バーナー症候群

一般的な原因

 上肢に灼熱感が走ることから名付けられたバーナー症候群は、上肢の一過性の

神経刺激症状である”スティンガー(上肢の刺すような痛み症状)”と同様、

アメリカンフットボールで頻発します。タックルやブロッキングの際に、障害側

への首の側屈によって神経が挟み込まれる場合や、反対側への頚椎側屈によって

神経が伸ばされることによって発生する場合があるとされています。

確認・診断

 バーナー症候群の病態は、脊髄から枝分かれして脊柱管から出てきた

神経根・神経叢に対する刺激症状と考えられます。頚椎が伸展し同時に障害側に

側屈されるときに、神経根が神経孔で挟み込まれて障害が発生し、首から

患側上肢へ放散する灼熱感を生じます。この上肢灼熱感は通常は片側の上肢のみに

発生します。受傷者は、上肢のしびれ感やチクチクした異常感覚や、三角筋

または上腕二頭筋の筋力低下を併発することがあります。

このような症状は、通常は数秒から数分で消失する一過性のものであり

首の痛みや、可動域制限を伴いません。

対応・治療

 上肢灼熱感はあくまでも症状であり、その原因に応じた治療法を

行う必要があるため、バーナー症候群を呈した選手をみる際には、

詳細な病歴聴取や身体所見をとることによって、首のより重篤な疾患

(椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など)を除外することが必要です。

通常は、上肢の灼熱感は自然に寛解し、特に治療を必要とはしません。

もしも症状を繰り返すような場合には、脊髄の障害や神経根の圧迫が

疑われます。しびれや脱力などの神経症状が持続する場合には、

MRIなどの画像検査や筋電図検査を行います。

競技復帰

 ⑴全ての症状が消失し、疼痛がない ⑵頚椎の可動域制限がない 

⑶上肢、肩甲帯の筋力が正常、の3つの条件を満たせば競技復帰可能です。

バーナーやスティンガー症候群を予防するためには、年間のシーズンを通して

頸部や肩甲帯の筋力強化やコンディショニング行うことが重要です。

またコンタクトスポーツでの適切なタックルの方法を習熟することや、

アメリカンフットボールのショルダーパッドなどの用具を適切に用いることも重要です。

ネックロール、カウボーイカラー、通常よりも高い位置のショルダーパッドのような

用具も、これらの損傷を予防を助けるために開発されています。

バーナー症候群受傷後に競技復帰する際の危険性を評価するためのガイドラインも策定されていて、

広く利用されているガイドラインによると、神経学的に異常所見を有する場合には、

その日は競技に復帰するべきではないとされている。

また、他のガイドラインによると、頸部の骨性の隆起部(頚椎棘突起)

に圧痛がある場合や、疼痛によって頚椎の可動域制限がある場合には、競技復帰する前に

頸部のX線撮影を行うよう勧めている。症状が一過性のしびれや異常知覚のみで、

これらの症状が速やかに消失するような場合には、

⑴神経学的所見に異常がない、⑵頚椎可動域が正常、⑶スパーリングテストが陰性

の3つの条件を満たせば競技復帰が許可されます。